
伝統的にジュエリーの中で最も人気の高いスタイルであるリングには、中世の時代、文化と精神において非常に重要な意味が込められていました。 カスタムデザインよりもむしろ市場で購入されることの方が多かったことから、男性女性を問わずあらゆる社会的地位の人に利用されるリングは、アイデンティティー、ロマンチックな愛情、社会的および教会のステータス、さらに生と死の本質にさえ、つながりを持つものと捉えられていました(図1)。 Treasures and Talismans(秘宝とお守り):Griffin Collection(グリフィンコレクション)のリング の展覧会は、中世の美術と建築を主体としたメトロポリタン美術館の分館であるCloisters(クロイスターズ)美術館で開催され、リングと時代の関連性に注目しています。 この展覧会は、金鉱山を守った伝説の生き物の名が付けられたプライベートコレクションの一部を展示したもので、リングの着用者と共に、5世紀初頭から16世紀にわたってリング製造に使用されていたスタイルと技法に焦点を当てています。 展示されるジュエリーを介してだけではなく、特にリングにこだわりを向けたビデオデモンストレーションや美術作品などの媒体を通しても、愛、死、および宗教的献身といったようなテーマを探求していきます。
展示される数多くのリングは、非常に見事です。 当時、金は他の形態から再利用したものであったので、金細工師は新しいリングを鍛造するための材料をコインや既存のジュエリーに頼っていました。 石も同様にリサイクルされていましたが、貿易が発展するにつれ、中東やアジアから手に入れることができるようになりました。 ファセッティングの技術が習得されたのは中世後期の時代であり、それまでは通常宝石は原石、カットされていない状態、カボションなどの形状で使用されていました。 アクアマリンと真珠がセットされた12〜13世紀に遡るビザンチン様式の金の指輪(図2)には、そうしたカットが施されていない素材がみられます。

今日では、リングがロマンチックな意味を持つことは一般に馴染みのある概念となりましたが、中世では愛の表現にはさまざまな方法がありました。 宝石はリサイクルをされ、または離れた場所から調達されなければならなかったので、図3のビザンチンの結婚指輪のように、宝石がセットされるべき場所に彫刻が施されることがよくありました。 エリザベス朝時代のカップルの中には、バンドの外側や内側に図柄の代わりに文字が刻まれている「posy(ポージー)」リングを選択するものもいました。 リングに刻まれた刻印メッセージには「Thinke Wel of Me(Think well of me:私を想って)」、「Providence Divine Hath Made Thee Mine(Providence Divine has made you mine:神の摂理であなたは私のものに)」、シンプルに「I Like My Choyse(I like my choice:私の選択を愛す)」などがあります。婚約や結婚の記念として、2つのバンドを合わせて1つの完全なリングとなるギメルリングも使用されていました。

聖職者と信徒は共に、宗教への献身を表すために宝飾品を身につけ、司祭と司教はその地位を示すために大ぶりなリングを身につけていました。 一番大きなリングがずれないように、複数のリングを一緒にはめなければならないこともよくありました。 この種の作品は、オランダ出身のアーティストであるMaster of Saint Augustineによる、木製パネルに油彩、金彩、銀彩で描かれた「Scenes from the Life of Saint Augustine of Hippo(ヒッポの聖アウグスティヌスの生活風景、1490年)」といったギャラリー内の美術作品で見ることができます。 同様のスタイルは、15世紀後半の「Saint Germain and a Donor」と題される彫刻に見られます。中世のキリスト教徒は、神のとりなしを得るために宗教的なシンボルや一節を刻印したリングやブローチを度々身につけていました。身体に直接これらを身につけることで、特に説得力があると信じられていました。 このカテゴリーにおいて特に興味深いのは、着用者に世俗的な快楽の非重要性を思い起こさせるための memento mori(メメント モリ) をモチーフにしたリングです。 ラテン語で「人には必ず死が訪れる」という意味を持つ言葉をモチーフにしたリングは、生のはかなさという本質を示す頭蓋骨や骸骨(図1の英国のリング参照)といった表象を特色としています。 このロケットリングのように、隠されたメッセージや忘れたくない言葉を入れるために、秘密の仕切りが付けられていることも多くありました。
アイデンティティの概念については、本コレクションの中の印章指輪やキーリング(鍵付き指輪)を通して検証されています。 印章指輪は、家族の紋章を持たない人々が文書や手紙の封印として使用していました。 ローマの伝統であるキーリングは、装着者のみが秘密の箱を開けて中身を取り出せる目的で使用されていました。 図4はキーリングの一種で、所有者の名前であるHomonoeaが刻まれています。

展示されている傑出した芸術作品のリングは、ヨーロッパ文化におけるリングの重要性を再認識させてくれます。 前述の作品に加え、リングを補足する展示物として、故人の肖像(全ての指に指輪を付けている)が描かれている2世紀のミイラの覆いなどがあります。 貿易に使われた天秤などのような道具、および彫刻(若者が女性にリングを贈る場面など)が施された象牙製の個人用保管箱も展示されています。 中世の金細工師によって使用されいていた技術の多くは時間の経過と共に失われてしまいましたが、展示場では現代的なカッティング、デザイン、およびセッティング創作のビデオを見ることができます。 機械を用いて比較的容易に行える作業が、かえって金細工師の骨の折れる仕事を強調しています。 Petrus Christusの油絵「A Goldsmith in His Shop(店の中の金細工師)」では、職人が道具と作品に取り囲まれ、結婚指輪を秤に乗せているところを、裕福なカップルが見ている光景が描かれています。
メトロポリタン美術館のキュレーターC. Griffith Mannが監修した Treasures and Talismans(秘宝とお守り) の展示は、ジュエリーを介してヨーロッパの古典時代以降の世界を独特な視点から表現します。
Treasures and Talismans(秘宝とお守り):Griffin Collection(グリフィンコレクション)のリング 展は、2015年10月15日まで、Cloisters(クロイスターズ)美術館のGlass Gallery(ガラスギャラリー)にて開催されます。 入場料は大人25ドル、65才以上のシニア17ドル、学生12ドルです。この入場料には、フィフスアベニューにあるメトロポリタン美術館本館の同日の入場料も含まれています。 Cloisters(クロイスターズ)美術館は、週7日開館。3月〜10月の営業時間は、午前10時から 午後5時15分までです。 休館日は感謝祭、クリスマス、および元日です。
Jennifer-Lynn Archuletaは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。

伝統的にジュエリーの中で最も人気の高いスタイルであるリングには、中世の時代、文化と精神において非常に重要な意味が込められていました。 カスタムデザインよりもむしろ市場で購入されることの方が多かったことから、男性女性を問わずあらゆる社会的地位の人に利用されるリングは、アイデンティティー、ロマンチックな愛情、社会的および教会のステータス、さらに生と死の本質にさえ、つながりを持つものと捉えられていました(図1)。 Treasures and Talismans(秘宝とお守り):Griffin Collection(グリフィンコレクション)のリング の展覧会は、中世の美術と建築を主体としたメトロポリタン美術館の分館であるCloisters(クロイスターズ)美術館で開催され、リングと時代の関連性に注目しています。 この展覧会は、金鉱山を守った伝説の生き物の名が付けられたプライベートコレクションの一部を展示したもので、リングの着用者と共に、5世紀初頭から16世紀にわたってリング製造に使用されていたスタイルと技法に焦点を当てています。 展示されるジュエリーを介してだけではなく、特にリングにこだわりを向けたビデオデモンストレーションや美術作品などの媒体を通しても、愛、死、および宗教的献身といったようなテーマを探求していきます。
展示される数多くのリングは、非常に見事です。 当時、金は他の形態から再利用したものであったので、金細工師は新しいリングを鍛造するための材料をコインや既存のジュエリーに頼っていました。 石も同様にリサイクルされていましたが、貿易が発展するにつれ、中東やアジアから手に入れることができるようになりました。 ファセッティングの技術が習得されたのは中世後期の時代であり、それまでは通常宝石は原石、カットされていない状態、カボションなどの形状で使用されていました。 アクアマリンと真珠がセットされた12〜13世紀に遡るビザンチン様式の金の指輪(図2)には、そうしたカットが施されていない素材がみられます。

今日では、リングがロマンチックな意味を持つことは一般に馴染みのある概念となりましたが、中世では愛の表現にはさまざまな方法がありました。 宝石はリサイクルをされ、または離れた場所から調達されなければならなかったので、図3のビザンチンの結婚指輪のように、宝石がセットされるべき場所に彫刻が施されることがよくありました。 エリザベス朝時代のカップルの中には、バンドの外側や内側に図柄の代わりに文字が刻まれている「posy(ポージー)」リングを選択するものもいました。 リングに刻まれた刻印メッセージには「Thinke Wel of Me(Think well of me:私を想って)」、「Providence Divine Hath Made Thee Mine(Providence Divine has made you mine:神の摂理であなたは私のものに)」、シンプルに「I Like My Choyse(I like my choice:私の選択を愛す)」などがあります。婚約や結婚の記念として、2つのバンドを合わせて1つの完全なリングとなるギメルリングも使用されていました。

聖職者と信徒は共に、宗教への献身を表すために宝飾品を身につけ、司祭と司教はその地位を示すために大ぶりなリングを身につけていました。 一番大きなリングがずれないように、複数のリングを一緒にはめなければならないこともよくありました。 この種の作品は、オランダ出身のアーティストであるMaster of Saint Augustineによる、木製パネルに油彩、金彩、銀彩で描かれた「Scenes from the Life of Saint Augustine of Hippo(ヒッポの聖アウグスティヌスの生活風景、1490年)」といったギャラリー内の美術作品で見ることができます。 同様のスタイルは、15世紀後半の「Saint Germain and a Donor」と題される彫刻に見られます。中世のキリスト教徒は、神のとりなしを得るために宗教的なシンボルや一節を刻印したリングやブローチを度々身につけていました。身体に直接これらを身につけることで、特に説得力があると信じられていました。 このカテゴリーにおいて特に興味深いのは、着用者に世俗的な快楽の非重要性を思い起こさせるための memento mori(メメント モリ) をモチーフにしたリングです。 ラテン語で「人には必ず死が訪れる」という意味を持つ言葉をモチーフにしたリングは、生のはかなさという本質を示す頭蓋骨や骸骨(図1の英国のリング参照)といった表象を特色としています。 このロケットリングのように、隠されたメッセージや忘れたくない言葉を入れるために、秘密の仕切りが付けられていることも多くありました。
アイデンティティの概念については、本コレクションの中の印章指輪やキーリング(鍵付き指輪)を通して検証されています。 印章指輪は、家族の紋章を持たない人々が文書や手紙の封印として使用していました。 ローマの伝統であるキーリングは、装着者のみが秘密の箱を開けて中身を取り出せる目的で使用されていました。 図4はキーリングの一種で、所有者の名前であるHomonoeaが刻まれています。

展示されている傑出した芸術作品のリングは、ヨーロッパ文化におけるリングの重要性を再認識させてくれます。 前述の作品に加え、リングを補足する展示物として、故人の肖像(全ての指に指輪を付けている)が描かれている2世紀のミイラの覆いなどがあります。 貿易に使われた天秤などのような道具、および彫刻(若者が女性にリングを贈る場面など)が施された象牙製の個人用保管箱も展示されています。 中世の金細工師によって使用されいていた技術の多くは時間の経過と共に失われてしまいましたが、展示場では現代的なカッティング、デザイン、およびセッティング創作のビデオを見ることができます。 機械を用いて比較的容易に行える作業が、かえって金細工師の骨の折れる仕事を強調しています。 Petrus Christusの油絵「A Goldsmith in His Shop(店の中の金細工師)」では、職人が道具と作品に取り囲まれ、結婚指輪を秤に乗せているところを、裕福なカップルが見ている光景が描かれています。
メトロポリタン美術館のキュレーターC. Griffith Mannが監修した Treasures and Talismans(秘宝とお守り) の展示は、ジュエリーを介してヨーロッパの古典時代以降の世界を独特な視点から表現します。
Treasures and Talismans(秘宝とお守り):Griffin Collection(グリフィンコレクション)のリング 展は、2015年10月15日まで、Cloisters(クロイスターズ)美術館のGlass Gallery(ガラスギャラリー)にて開催されます。 入場料は大人25ドル、65才以上のシニア17ドル、学生12ドルです。この入場料には、フィフスアベニューにあるメトロポリタン美術館本館の同日の入場料も含まれています。 Cloisters(クロイスターズ)美術館は、週7日開館。3月〜10月の営業時間は、午前10時から 午後5時15分までです。 休館日は感謝祭、クリスマス、および元日です。
Jennifer-Lynn Archuletaは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。
