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宝石のカッティングスタイル - 定義

消防士追悼記念
Christopher Wolfsbergによってカットされたアメトリン。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

全5部の連載記事『カラー宝石(ダイヤモンド以外)の価値要因、デザイン、カットの品質』の第2部。

2016年に初版がGemGuide(ジェムガイド)で発表されたこの総合シリーズは、ファセットカットされた宝石の価値を決定する際にカットの品質が果たす役割に特に重点を置きながら、カラー宝石の価値に影響を与える品質要因を検討します。GIAの研究員およびカットの専門家、Al Gilbertsonは、カットの要素を研究し、カット職人の選択、利害得失の判断そしてその理由を探求し、カラー宝石のカットの品質の様々な側面を評価するためのガイドラインを提供します。

オリジナルの連載記事のこのウェブサイト版は、5つの記事に分かれており、オリジナルの文体をわずかに編集したものです。

この連載記事の第1部では、カラー宝石の価格に影響を与える7つの主要な要因であるカラー、色の均一性、原産国、サイズ、クラリティ(透明度)、形、カットの品質を検討しました。第2部となるこの記事では、基本的なファセッティングスタイルに焦点を当てながら、共通言語をいくつか確定するためにカッティングスタイルの特徴を定義し、カボションとビーズに関して簡略に説明します。

本記事にわたって使用されるファセットの配置のワイヤフレームまたは描写に関する注記: これらは、宝石のカットの特徴を表現するために本物の宝石をスキャンして作成されました。フェイスアップのパターン(図2-14など)は、DiamCalcというプログラムを使用して作成されました。また、示されている宝石素材を表すために屈折率が調整されました。DiamCalcは複屈折を表示できません。

ファセットカットされた宝石の各部名称

ファセットカットされた宝石の大半には、一般的にクラウン、ガードル、パビリオンのように共通する特徴があります。しかし、世界のある地域では多くの宝石のカットに不規則なパビリオンファセットがあるため(図2-01参照)、ファセット自体が名称に関する一般的な慣例に従っていません。

ファセットの配列のワイヤーフレーム
図 2-01: このイラストでは、宝石と不規則なパビリオンファセットに共通する特徴が示されている。イラスト: Al Gilbertson/GIA

通常、観察者は光がどのように集まり、返ってくるかを観察するために、宝石のクラウン(上の部分)にある平らな上部のファセットすなわちテーブルを通して見ているように、宝石はカットされます。ガードルは宝石の外側の端であり、ジュエリーやアートでは金属が石を掴んでいるところです。パビリオンは、宝石の下側の部分です。パビリオンのファセットが底の部分で先端部に集まっている場合、その先端部はキューレットと呼ばれています。また、テーブルと平行である小さいファセットがキューレットに時折ありますが、これはキューレットファセットと呼ばれています。

宝石の全体の深さは、テーブルからキューレットまでの宝石の合計の厚さです。宝石のクラウンの高さ(直径のパーセンテージで表わされる)は、カッティングスタイルによって深いものから浅いものまで様々です。 また、パビリオンの深さ(直径のパーセンテージで表わされる)も多種多様です。パビリオンの深さが浅すぎると、石がかすれて見えてしまい、これはウィンドウと呼ばれています。一方、パビリオンの深さが深すぎると、宝石が全体的に暗く見えてしまいます。

「ネイティブカット」(詳細は後述)と呼ばれているカットの多くの例が、図2-01および2-02で示されています。ファセットがパビリオンで非常に不規則であることがよくあります。クラウンは幾分規則的ですが、パビリオンのように不規則になることがあります。キューレットは、ネイティブカットの宝石ではかなり中心から外れていることがあります(図2-02参照)。これらの宝石は、キューレットが意図的に片側に偏ってカットされました。カットの品質を向上させるためにこれらをリカットすると、通常、色が損なわれ、価値が非常に減少します。

 

本土切磨
図 2-02: 業界で「ネイティブカット」と呼ばれているカットの例。意図的にシフトしたのが顕著なキューレットのレンダリングがかなりオフセンターである。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ブリリアントスタイルとファセットの名称

この業界でカラー宝石を販売している方々は、ダイヤモンドに焦点を置く方とカラー宝石を重視する方の2種類に主に分類されます。これら2つのグループの方々が宝石のある部分に異なる名称を使用することが時折あります。図2-03では、これらのファセットに使用される最も一般的な名称が記載されています。

Fig. 2-03. Although there may be inconsistencies in how the trade describes certain facets, these are the most commonly used terms. Illustration: Al Gilbertson/GIA

テーブルは、クラウンの中心にある最大のファセットです。 クラウンメイン(ダイヤモンドの業界ではベゼル)は、通常、凧の形をしており、スター(テーブルに接する三角形のファセット)およびブレークまたはアッパーガードルファセット(ガードルに隣接しているファセット)間の位置を指します。クラウンメインは、通常、テーブルの端およびガードルの端に接しています。

カラーストーンのカット職人は、ファセットがテーブルに平行になっていなくても、キューレットがある場所に接しているパビリオンファセットをキューレットファセットと呼びます(カラー宝石の加工職人が使用するGemCadと呼ばれるソフトウェアが生成されるダイアグラムではこの様な名称を与えるのは一般的です)。このダイアグラム(図2-03参照)では、凧形のキューレットファセットがカイトファセットと呼ばれることもあります。ローワーガードルファセットとキューレット(またはキューレットファセット)の間に三角形または凧型のファセットが複数の列を成している場合、中間の列にあるファセットは、メインまたはパビリオンメインと呼ばれます。また、この場所にはファセットの列がいくつもあり、それらをすべてメインと呼ぶことがあり得るため、さらに紛らわしくなることがよくあります。ローワー ガードル ファセットまたはローワー ハーフ ファセットという名称は、ダイヤモンド業界ではパビリオン側にあるガードルのファセットを表すために使用されますが、カラーストーンのカット職人は、通常、これらをブレークファセットと呼びます。

形が対称でなくなると、ファセットの配置が標準的でなくなります。図2-04では、ファセッティングのスタイルはブリリアントですが、ブリリアントスタイルに共通する形が限定されていないため、パビリオンファセットの中には名称が不明なものがいくつかあります。

図 2-04: 形が対称でなくなると、ファセットの配置が標準的でなくなることがある。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ステップカットスタイル

ファセットの配置のほとんどは、最も古典的なエメラルドカットであるステップカットで主に で構成されています(図2-05参照)。どのような形でもステップカットにカットすることができます。図2-06は楕円形のステップカットを示しています。ファセットがきちんと接していなく、多くが平行でないことに注意してください。通常、商業用にカットされたほとんどの宝石ではこのような特徴が見られます。カットの精度が高ければ高いほど、これらのファセットがきちんと接します。キューレットのひとつのポイントではなく、このファセットの配置の下部に沿って線が形成されていることに注意してください。最下部はキューレットと呼ばれていますが、この線はキールまたはキールラインと呼ばれることがよくあります。通常、ステップカットにはキールがあります。

図 2-05: エメラルドカット向けステップカットのファセットの配置。イラスト: Al Gilbertson/GIA

図 2-06: 楕円形カット向けステップカットのファセットの配置。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ステップカットのファセットには4面あり、上下の端がほぼ平行になっています。クラウンファセットでは、上部の端がテーブルの端に平行(またはほぼ平行)になっており、下部の端はガードルに平行(またはほぼ平行)になっています。ほとんどの商業用のカットでは、ステップがきちんと接していない場所から残された三角形のファセットがあります。これらは時折5面となることもあります(例:エメラルドカットのクラウンにある角、図2-05参照)。

ミックス カット スタイル

ミックス カットは、カット職人がファセットの配置においてブリリアントカットとステップカットの両方のスタイルを使用したということです。楕円形とクッションは、パビリオンがステップカットされてもクラウンはブリリアントスタイルのカットが施される事が多くあります(図2-07参照)。そうすることで異なるパターンに光が分散します。カラー宝石の価値においては色が均一であることが重要です。また、カットのスタイルをミックスすることで、色が均一になり、キューレットにある小さなウィンドウがもたらす影響を最小限に抑えることができます。

図 2-7: 図 2-7: ミックス カット スタイルは、ファセットの配置においてブリリアントカットとステップカットの両方のスタイルを使用する。楕円形やクッションシェイプの宝石は、このスタイルにカットされることが多い。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ローズカットスタイル

ローズカットは、3つ以上のファセットで形成されたアペックス(図2-09参照)まで到達するドーム型のクラウンを持つ平らな底部があるのを特徴とします。バラの蕾の形に似ているためこのように名付けられたローズカットは、1500年代にダイヤモンドで最初に使用されたカットでした。1800年代まで、このカットスタイルはマーカサイト(白鉄鉱)やガーネットのような数少いカラー宝石で使用されていました。最近では、その他の数多くのカラー宝石で使用されています。

図 2-09: ローズカットは、1500年代に初めて登場したダイヤモンドのカットだが、現在はカラー宝石のカットとして人気を集めている。イラスト: Al Gilbertson/GIA

 

ファセットカットされていないカッティングスタイル

宝石のカッティングスタイルでファセットカットされていないものは、ファセットカットされているスタイルよりも前から存在しており、ビーズまたはカボション(またはカボ)のいずれかが最も初期のものでした。宝石のビーズは、様々な形や大きさに成形加工され、糸を通したりするために穴が開けられます。素材は透明から不透明であるものが使用されます。